官房長官会見と、質問をぶつける自由

総理大臣の女房役で内閣のスポークスマンとして1日2回記者会見を行っている官房長官。このポストに歴代最長の4年半在任する菅官房長官は、首相官邸への権力集中を目指した「中央省庁改革」の成果を背景に、かつてない絶大な権力を有しています。その菅官房長官の会見で、先週、真正面から何度も質問をぶつける女性記者の声を耳にして、思わず背筋を伸ばしました。

官房長官会見と、質問をぶつける自由
(写真引用:sankei.com)

首相官邸の会見室は、政治記者として30代半ばに差し掛かっていた僕の、主戦場でした。1998年の夏、参議院選挙で大敗した橋本内閣に代わって、小渕内閣が発足すると、野中官房長官の「番記者」を任されました。長引く金融不安と脆弱な政権基盤のため、小渕総理大臣は「冷めたピザ」と評されるほど不人気で、野中官房長官の記者会見は、自分の言葉で国民に語りかけることを模索していました。僕自身も、「番記者は裏で情報を取るのが仕事で、質問などしなくていい」とされてきた先例に疑問を感じ、会見室の最前列中央を定位置にして自分の質問でニュースを引き出そうと意気込んでいました。

官房長官会見と、質問をぶつける自由
(写真引用:pdmagazine.jp)

もちろん、番記者が第一に求められていたのは、迅速かつ正確に政権中枢の情報を入手することであり、結局は予定調和の世界じゃないかと指摘されれば否定ができませんが、ギリギリの線で情報をやり取りしていたという自負は今も持っています。その後、小泉総理大臣が、毎日テレビカメラに向けて自ら発言するスタイルを確立すると、官房長官会見のあり方も徐々に変化してきました。首相官邸が圧倒的な主導権を握る「安倍1強体制」の記者会見のスタイルが定着し、5年近くが経とうとしています。

官房長官会見と、質問をぶつける自由
(写真引用:asahi.com)

菅官房長官の記者会見では、「何ら問題ない」「指摘は全く当たらない」と短く言い切り、有無を言わせずに質問を遮る場面が目につきます。そうした威圧感に押され、会見に出席している記者の大半が対峙する術を失っているように見えます。加計学園の獣医学部新設問題で「総理のご意向」などと記された内部文書について、前川喜平前文部科学事務次官が「確実に存在していた」と証言しても、複数の現役職員が同様に証言しても、菅官房長官は、「文部科学省において検討した結果、出所や入手経路を明らかにされていない文書については、その存否や内容などの確認の調査を行う必要はないと判断した」と突っぱねていました。そうした中で、先週、東京新聞の望月記者が、前川氏の出会い系バー通いの情報や公益通報者保護制度の適用などを取り上げながら、第3者による文書の再調査を行うべきだと繰り返し見解を質しました。「私が答える立場にありません」「法律に基づいて適切に対応しています」「いま申し上げた通りです」と答弁されても、怯まず執拗に食い下がりました。進行役の官邸職員が「同じ趣旨の質問を繰り返し行うのは止めていただきたいと思います」と口を挟んでも、「きちんとした回答をいただけていると思わないので、繰り返し聞いています」と反論し、臆せず質問を続けました。官房長官に聞くのは筋が違うと感じた質問もありましたし、もっと他に聞くべきことがあるだろうという批判も目にします。しかし、素っ気なく突き放されても、周囲から冷ややかに見られても、国民が知りたいことを聞き、いま質問すべきことをぶつける。望月記者の姿勢は、報道の原点を、議論の原点を、再認識させてくれました。

官房長官会見と、質問をぶつける自由

松本に帰ってから1年半が経ち、なぜ疑問に思っていることを指摘しないのだろう、表立って議論することが敬遠されるのはなぜだろう、と感じることが多々あります。とりわけ議会とメディアを見ていて、そう感じます。これでは、市民が市政に関心を持つことにならないし、これまでの延長線上でやっていけばいいと考えるのも当然です。60年ぶりに建て替えの検討が始まった市役所新庁舎について、菅谷市長は、市民を二分する争いを避けることを理由に、現在地を建設場所とする方針を示し、ほとんど議論らしい議論が行われないまま決定されようとしています。未来の市役所はどうあるべきか、市役所の現在地を含めた松本城周辺をどう整備していくか。自由に質問をぶつけて闊達に議論をすることが、50年先、100年先を見据えた街づくりには求められると考えます。


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