松本城から、多事争論を取り戻す

松本城公園を会場に過去3回で5万人余りを集めたクラフトビールを味わうイベントについて、公園を管轄する松本市教育委員会が「飲酒は松本城の品格にふさわしくない」という理由で事実上開催を認めない措置を取ったことが、市民に波紋を広げています。イベント開催の是非から、酒を嗜むことの意味まで、さまざまな観点の意見が飛び交っていますが、僕が感じる一番の問題は、決定のプロセスと責任の所在です。

松本城から、多事争論を取り戻す

今回の決定は、いつどのように行われたのか。地元紙の報道によりますと、今年3月に開かれた教育委員会の非公式の協議会で、松本城公園の使用許可に関する内規に「飲酒や酒類販売を伴うイベントは自粛を要請する」という細目を追加することが承認されたということです。教育委員会は、市長が任命する教育長と民間から選ばれた4人の委員で構成され、その傘下にある教育部の松本城管理事務所が公園の管理や整備を担当しています。「飲酒は松本城の品格にふさわしくい」として内規の改正を提案したのは、教育委員会のメンバーなのか管理事務所の職員なのか。その上で、どのような議論を行って3月の決定に至ったのか。そもそも、これだけの方針転換をなぜ定例の委員会で議題とせずに非公式の協議会で取り扱ったのか。不明朗な点が数多くあります。教育委員会と松本市には、速やかに情報を公開して市民が納得する説明を行うことが求められます。こうしたことが明らかになって初めて、今後の対応について幅広い視点の議論ができると考えます。

松本城から、多事争論を取り戻す

内規の改正によって市民の活動に関わるルールが変更されるという点にも、釈然としないものがあります。本来、内規とは、その組織の内部だけで適用することを目的とした規則です。そうであるがゆえに、通常は外部に公開されないことが前提となっています。松本城公園に関する内規も、市民に公開されていません。プロセスどころか判断基準も、正確にはオープンにされていないわけです。これでは担当者の裁量で恣意的な運用が行われても、是正することは困難です。市民の目に見えるルールとして定めることが、責任の所在を明確にするためにも必要です。今回、内規の改正で用いた表現が、「禁止」ではなく「自粛要請」となっているのも、市民の自主的な判断によるという体裁を取ることで、行政に批判の矛先が向かないようにしたいという思惑が透けて見えます。

松本城から、多事争論を取り戻す

いつどこで誰が主導して決めたのか、よくわからない。市民が問題を認識したときには、すでに結論が出ている。幅広い視点に立って議論しようにも、議論する場がない。これは、松本城公園の使用問題にとどまらず、いまの松本市に散見される行政スタイルです。「新博物館」の建設も、「新市庁舎」の建設も、大勢の市民の目に触れないうちに限られた範囲の人間で決めてしまおうと考えているとしか思えない方法で進められています。これでは、未来に向けて、より良いものを創り出していくことはできないと思います。時代の変化を見据えて、もっと視野を広げて、松本の街づくりを考えていくべきです。今回の問題を契機に、松本城を「市民の憩いの場」として「旅行者が楽しめる場」として、さらに魅力あるものにしようと考えれば、すぐ隣にある現在の市役所の敷地をどう活用していくことがベストなのかという議論も、自ずと起きてくるでしょう。

いま松本に何より大切なことは、「多事争論」です。1つの意見がどんなに正しくても、ほかの意見を最初から排除せず、大勢の人々が様々な議論を戦わせること。若い世代の意見や異端視される見解にも耳を傾け、自由の気風の下で物事を決めていくこと。「忖度」とは対極に位置する政治の構えです。多事争論のある社会を取り戻すことに、ビアフェスで広がった波紋をつなげていきたいと思います。


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