衆参同日選挙はないのか

3年に1回定期的に行われる参議院選挙に合わせて、総理大臣が衆議院を解散し、同じ日に衆参両院の選挙を一挙に行う、「衆参同日選挙」。 4月初めの頃は政府や与党の有力者が盛んに可能性に言及していましたが、熊本地震で風向きがガラッと変わり、4月下旬に主要メディアが相次いで「首相、同日選見送りへ」と報道しました。 果たして、そういうことなのでしょうか。

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産経ニュース

そもそも、衆参同日選挙は、どのような場合に行われ、どのような結果になっているのか。 過去に同日選挙が行われたのは、1980年と1986年の2回しかありません。1980年は参議院選挙の直前に大平総理大臣が病気で急死するという想定外の事態が起きたために行われ、 1986年は中曽根総理大臣が自民党単独政権の回復を目指して行いました。結果は、いずれも自民党の大勝。中曽根総理大臣は、直前まで同日選挙はできないと思わせながら、300議席を獲得し、自民党総裁の任期を1年延長する特典まで手に入れました。 つまり、少ない事例とは言え、衆参同日選挙は、野党の虚を突く形で行われ、総理大臣や与党が権力基盤を強める結果をもたらしているわけです。 さらに、制度や選挙区の異なる2つの選挙を同時に行うため、政党間で選挙協力や候補者調整を行うことが難しくなるという特徴もあります。

政治家や政党が目指す理念や政策を実現するには、選挙によって権力や権限を手に入れることが不可欠です。安倍総理大臣も、その有力な手段として同日選挙を模索することは当然のことです。 安倍総理大臣にとって最終的に実現したいことは、「戦後レジームからの脱却」、つまり日本国憲法の改正です。そのためには、憲法改正に賛成する勢力を衆参両院で3分の2以上にすること が必要です。与党と憲法改正に賛成する勢力を整理すると、衆議院で20議席程度減らしても、 参議院で12~13議席増やせれば、衆参両院で3分の2以上を確保できる計算です。

安倍総理大臣は、この数字をクリアできるかどうかを、ギリギリまで見極めようとしているはずです。ノーベル経済学賞を受賞したアメリカの経済学者を連れてくる演出までしたくらいですから、 消費税率引き上げの先送りは規定路線です。今月下旬の伊勢志摩サミット、オバマ大統領の広島訪問と、安倍総理大臣の国際的なリーダーシップや核廃絶への姿勢をアピールする場面が続きます。 その成果や国民の反応を見て、さらに為替と株式の市場動向を見極め、国会会期末の6月1日に衆議院を解散して、同日選挙に踏み切るかどうかを最終判断することになります。

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では、私たち国民は、どのような評価の枠組みで選挙に臨めばいいのか。 同日選挙にならなくても、参議院選挙はあります。目の前の暮らしにとって、今の政権にさらに権力を与えるのがいいかどうかということが、第1の判断基準でしょう。同時に、今回の参議院選挙、とりわけ衆参同日選挙となれば、衆参両院で与党+αが3分2以上の勢力を確保して憲法改正に踏み出すことを望むのかどうかが問われる選挙になります。

数ある政治に関する問題の中で、「衆議院の解散は、総理大臣の専権事項である」という言葉が あります。誰にも相談する必要がないし、誰にも止める手段がないということを意味しています。 このところ国内で目立った政治ニュースはありませんが、安倍総理大臣が戦後日本の進路を左右 する衆参同日選挙に踏み切るかどうかの決断は、20日足らずに迫っています。


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