ポピュリズムという言葉をどう捉えればいいんだろうか。先日、小さな宗教の節分祭に集まったお年寄りや家族連れの姿を見ながら、頭を過ぎりました。東京で政治記者をやっていたときと、地方都市で政治家を目指している現在では、微妙に受け止め方が変わっていることを感じています。
![ポピュリズムとは何か、地方からの視点](http://img01.naganoblog.jp/usr/g/a/u/gaun/66fe985d16a4e0ba69ddb8f40e614bb0_7729b8082169f7715e54bf7ea31a663c.jpg)
普段、報道や政治の場で使われるポピュリズムという言葉は、否定的なニュアンスが前提となっています。大まかに言えば、民主主義はいいもの、ポピュリズムはよくないもの、と区分けされてきました。しかし、イギリスのEU離脱やアメリカのトランプ大統領誕生という世界史的なエポックが、ポピュリズムと関連付けて分析・論評され、日本もこうした動きと無縁ではない状況であることを考えれば、そもそもポピュリズムとは何なのか、今こそ突き詰めておく必要があると思います。
![ポピュリズムとは何か、地方からの視点](http://img01.naganoblog.jp/usr/g/a/u/gaun/9d6e32aa20d755bd964db268ada552dd_969abe9d0e0febf4bd8443ee25bf7549.jpg)
政治学者の水島治郎氏は、著書『ポピュリズムとは何か』で、①固定的な支持基盤を超えて幅広く国民に直接訴える「政治スタイル」②人民(=民衆)の立場から既成政治やエリートを批判する「政治運動」という2種類の定義があると指摘しています。①がリーダーの目線から見たポピュリズム、②が民衆の目線から見たポピュリズム、と言い換えられるかもしれません。現代の日本で政治を考える際に使われてきたのは、主に前者の意味でした。小泉さんや橋下さんの政治手法に対する論評が、その典型です。一方で、イギリスをEU離脱へ導き、アメリカでトランプ大統領を生み出したのは、後者の伝統的な右派にも左派にも分類できない「下」からのポピュリズムでした。
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こうしたポピュリズムの原動力となったのは、イギリスでは「置き去りにされた人々」、アメリカでは「忘れ去られた人々」と呼ばれた、グローバル経済によって衰退した地域で疎外感を味わう普通の人たちです。そして、ヨーロッパでは、民族主義や権威主義をベースとした極右のポピュリズム政党と一線を画し、エリート支配への批判や民衆の政治参加を前面に掲げる「リベラル型」のポピュリズム政党が、有権者の支持を広げているとされています。日本でも、経済格差の拡大や東京への一極集中が加速していく中で、「下」からのポピュリズムが胎動してきています。
![ポピュリズムとは何か、地方からの視点](http://img01.naganoblog.jp/usr/g/a/u/gaun/f289cc588f1b92434e755bcbc9b86fc6_48c99e63aac243fdb07531b4bca218d1.jpg)
松本に戻ってから、様々な境遇の人たちと出会い、これまで見えていなかった生活の現実を垣間見ることができる機会が増えました。欧米に見られる反イスラム&自国民主義と同列に論じられないものの、日々の生活や雇用、教育や介護の不安から生まれる、既成政党やエリートへの不満というポピュリズムの土壌は、地方都市で静かに広がりつつあると感じます。それが、多様な民衆の暮らしに目を向けさせ、停滞した政治を改革することにつながるのであれば、必ずしも否定的に捉える必要はないでしょう。「ポピュリズムは、デモクラシー(=民主主義)の後を影のようについてくる」(マーガレット・カノヴァン)という言葉があります。ライバル不在の安倍1強体制と都民から喝采を浴びる小池劇場を横目に、ポピュリズムの功罪を見極めていきたいと思います。
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