日大アメフトの展開と、佐川氏の不起訴

「スポーツの範疇を超えている」を書いてから半月。日大アメフト部の悪質タックルをめぐる問題は、予想した通りマスメディアが大きく取り上げ、想定していたよりも正常な方向に進んでいる。もちろん、内田前監督やその背後に控える日大理事長らの責任や進退がどう問われていくのか、まだ予断を許さない面はあるけれど、ウソは暴くことができるということ、理不尽な組織の命令に対抗するには個人の勇気と仲間の連帯が必要だということを、大勢の人たちに思い起こさせた意味は大きいと思う。

日大アメフトの展開と、佐川氏の不起訴

間違いなく分岐点だったのは、タックルをした宮川選手の記者会見だった。5月22日の午後は、テレビから目が離せなかった。冒頭、代理人の弁護士が、「顔を出さない謝罪はない」と本人が判断して開いた記者会見であることを説明すると、宮川選手は、真正面をしっかり見据えた後、深々と頭を下げた。

監督やコーチとどのようなやり取りがあったかを記した陳述書を落ち着いて読み上げ、事実と記憶と憶測を腑分けしながら慎重に言葉を発していた。あくまで自分の弱さが引き起こした事態であるとする姿勢は、最後まで揺らがなかった。「自分の意思に反することは、全てにおいてすべきでないと思います」という言葉が、胸の奥まで届いてきた。

もちろん宮川選手本人の態度に胸を打たれたが、同時に、内田前監督サイドの機先を制して記者会見の段取りを整え、何を語るべきか、何を語るべきでないかの線引きを的確にアドバイスした、弁護士の仕事ぶりは素晴らしいと感じた。こうした人物に息子の弁護を頼むことのできる父親がいてくれて、宮川選手はギリギリのところで救われたと思った。

この記者会見を契機に、関学アメフト部の首脳陣やケガをした選手の父親が、問題の核心は選手でなく指導者にあるという前提で的確な対応を取った。日大アメフト部の現役選手の中からも、当日の状況を証言する者が現れ始めた。宮川選手の勇気が、周りにいた様々な人たちに伝染したのだと思う。一連の報道にこれだけ注目が集まったのは、勇気が伝染していく状況を自分も共感したいと思った人が多かったからではないか。少なくとも自分は、そうだった気がする。

日大アメフトの展開と、佐川氏の不起訴

一方、1年以上も燻り続ける森友問題を象徴する記者会見が、きのう大阪地方検察庁で行われた。決裁文書の改ざんで告発されていた財務省の佐川宣寿前理財局長を、嫌疑不十分で不起訴処分としたことについて、山本真千子特捜部長が公式の質疑に対応した。検察が不起訴処分で記者会見するのは、異例だ。

朝日新聞によれば、山本特捜部長は、「今回の事案が社会的な批判の対象となっていることは、承知している。だが、犯罪にあたるかどうかは慎重に考えざるを得ない」。当然だろう。その上で、「関与がないことが明らかになれば、『嫌疑なし』になる。佐川さんは『嫌疑なし』という証拠はない」と述べた。国有地の値引きや文書改ざんに首相周辺の関与はあったのかについては、結果的に何も語っていない。「お応えできません」「これ以上は差し控える」といった回答拒否が25回以上に及び、安倍政権に対する遠慮はなかったのかという質問には、「必要な捜査を尽くし、本日このような判断に至った。政治的な意図は全くございません」と答えている。

検察の記者会見は、昔も今も映像取材が行われていない。検察側が拒否しているからだが、報道各社の社会部は暗黙の了解として受け入れている。だから、今回も映像と音声はない。山本特捜部長の、表情も口調もニュアンスも、僕らにわからない。もちろん文字や文章だから伝わってくるものもあるが、勇気の伝染や感情の波紋は起こりにくい。個人の勇気や仲間の連帯を生み出す、メディアの役割の大きさを、改めて肝に銘じる。


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