ポスト安倍1強へ、保守を問い直す

「安倍1強、多元主義を問う選挙」と位置付けた衆議院選挙が、自民党284議席確保という結果で終わってから、1週間が経ちました。開票直後から安倍総理大臣が、「謙虚に」という言葉を繰り返し口にしていたにもかかわらず、本格的な論戦の場となる臨時国会の召集は見送られ、野党の質問時間の削減が提起されています。1強体制の露骨な現実が、早くも顕在化しています。

ポスト安倍1強へ、保守を問い直す

こうした状況がある程度予想されながら、それでも安倍1強体制を継続させた民意の根底には、何があるのか。野党の乱立や小選挙区制の特性といったテクニカルな要因とは別に、僕が漠然とながらも辿り着いた答えは、「保守」という言葉です。今ほど、日本人が「保守」であることを肯定的に受け止め、自明の理のように考える時代はなかったように思います。

もとより「保守」は、18世紀に「進歩」に対抗する概念として生まれました。イギリスの政治思想家、エドマンド・バークが、破壊的で急進的な社会変革を目指したフランス革命を批判し、秩序ある漸進的な変革を進める立場として打ち立てた思想が、「保守」の出発点でした。したがって、“単に旧来のものを守り、変化を嫌う” 態度とは区別され、歴史的に蓄積された経験や習慣を尊重しながら自ら漸進的に改革を進めていくことが、本来の「保守」と考えられてきました。

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では、日本の政治において「保守」とは、どのような立場として定着してきたのか。政治学者の宇野重規氏は、著書『保守主義とは何か』で、明治憲法体制を前提に立憲政治や政党政治の漸進的な改革を志向した伊藤博文に、源流を見ることができると指摘しています。その流れを戦後の復興期に引き継いだ人物が、吉田茂です。吉田茂は、安全保障をアメリカに依存し、経済発展を最優先課題とする、軽武装・経済重視の「吉田ドクトリン」を主導。それを継承する自民党の政治勢力が、最近まで「保守本流」と呼ばれてきました。

ポスト安倍1強へ、保守を問い直す

こうした戦後日本の「保守」の概念は、いま大きく変容しつつあります。安倍総理大臣が第1期政権から掲げているキャッチフレーズは、「戦後レジームからの脱却」です。戦後レジームとは、吉田ドクトリン=従来の保守本流路線を含め、70年続いてきた日本国憲法に基づく秩序であり、それを脱ぎ捨てようという政治は、漸進的な変革ではなく急進的な変革を志向しているように見えます。一方、今回の選挙では、小池新党が「寛容な改革保守政党」と綱領に記し、立憲民主党の枝野代表が自らを「保守でありリベラルである」と位置づけています。そもそも、「保守」の後ろ盾だったアメリカが、自国第一主義を掲げる大統領を選び、超大国の座から降りる構えを見せている以上、「保守」を自称する政治勢力は、戦後築き上げてきた制度や習慣の何を継承し、どのような未来に向けて漸進的に改革を進めるのか、互いに競い合う段階を迎えています。

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人口が減少する局面に入り、「進歩」が見えにくい時代だからこそ、日本人は、世代や地域を超えて、「保守」という言葉に引きつけられているように見えます。松本市の四賀地区は、12年前の合併以降、6400人余りの住民が4000人台に減りました。小中学校は各学年1クラスを何とか維持できていますが、交通事情の悪さから高校進学を機に離れていく世帯が増えています。それでも、行政と力を合わせ森と農の特色に磨きをかけることで、自分たちの地域を未来に引き継いでいこうとしています。

今から40年ほど前、「保守本流」の系譜を継ぐ大平正芳総理大臣は、経済成長以降の新たな国家目標として「田園都市構想」を提唱しました。目指したのは、地域の自然や文化を大切にし、市町村の自主性を極力尊重する、大都市と地方都市と農山村のバランスが取れた国づくりです。自分たちが守りたいものは何なのか。何が本当の「保守」なのか。ポスト安倍1強の政治に向けて、僕ら一人一人が問い直す必要があります。


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