昨夜、安倍総理大臣が、麻生財務大臣、谷垣幹事長、菅官房長官と会談し、来年4月の消費税率の10%引き上げを2年半延期する考えを伝えたと、マスコミ各社が一斉に報道しました。再び先送りする理由として、安倍総理大臣は、世界経済が危機に陥る大きなリスクに直面していることを挙げています。リーマンショック級とされるリスクとは何なのか、再延期で決着するのか。
安倍総理大臣は、消費税率の10%引き上げについて、「リーマンショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り、予定通り引き上げる」と繰り返し説明してきました。その一方で、 リーマンショックや大震災のあるなしにかかわらず、マイナス金利を導入しても投資や消費が低迷して実質賃金が上向かない現状では、いずれ安倍総理大臣は引き上げの先送りを打ち出すだろうという見方が支配的でした。参議院選挙を前に野党も一致して先送りを求める状況となり、表明する時期や理由がどうなるかに焦点が絞られていました。
こうした中で、G7サミットの討議に臨んだ安倍総理大臣は、リーマンショックの際と比較した 「4枚の資料」を自ら示し、「リーマンショック級のリスクに直面している」という認識を共有しようと、議論を引っ張っていきました。
ところが、ドイツのメルケル首相やイギリスのキャメロン首相は、そこまで悲観的な見方に同調しなかったことが、外国メディアで報じられています。事実、サミット首脳宣言には、リーマンショックを想起させるような文言は盛り込まれていません。世界経済の現状認識を半ば強引にリー マンショックに引き付けようとした安倍総理大臣の狙いは、必ずしも成功しなかったわけです。
リーマンショックとは、2008年9月、低収入者向けの住宅ローン「サブプライムローン」問題で信用を失った、アメリカの投資銀行リーマンブラザースが破綻したことに端を発した、世界的な金融危機です。日本でも、平均株価が1か月半で1万2000円台から7000円を割り込み、 急速な円高ドル安も進んで、大幅な景気後退につながっていきました。 「経済は生き物」と言われ、先行き不透明な状況であることに異論がある人はほとんどいないと思いますが、政府内でも、近い将来ここまでの危機的事態が起こる恐れがあると考えている人はどの程度いるでしょうか。先週、発表された政府の月例経済報告でも、「世界の景気は、弱さがみられるものの、全体としては緩やかに回復している。先行きについては、緩やかな回復が続くことが期待される」という見方が示されています。選挙を控えているとは言え、なぜ安倍総理大臣がそこまで従来の発言との整合性にこだわるのか、わかるようでわからないところです。
表明時期や進め方については、政府・与党内の調整が残されているようですが、来年4月からの消費税率10%引き上げが延期される方向は動かないでしょう。注目したいのは、2年半という期間です。上記の年表のように、2年半延期すると、安倍自民党総裁の任期満了、衆議院議員の 任期満了、次の次の参議院選挙の、3つのハードルを飛び越えてしまうことになります。ここまで先送りするとなると、しかも前回と合わせて4年も先送りするとなると、もはや延期ではなく、事実上の撤回と見た方がいいような気がします。超高齢化に直面し経済成長が頭打ちとなる中、社会保障の財源をどのように確保し、財政再建の道筋をつけていくのか。各党が社会保障と税の一体改革案を改めて示し、国民的議論をやり直す時期に来ているのではないでしょうか。
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