安倍総理大臣が、通常国会の閉会日に消費税率引き上げを再延期することを表明した記者会見。理由に挙げたのは、「最悪の場合、再びデフレの長いトンネルへと逆戻りするリスクがある」ということでした。安倍政権の発足から3年半、全政党が「いまは増税しない」ことでは一致した形になった参議院選挙で問われることは何でしょうか。
安倍総理大臣の記者会見は、周到に練り上げられた論理展開であり、表現ぶりだなと感じました。 物議を醸した「リーマンショック級のリスク」について、「リーマンショックのような金融不安とは異なる」と批判の矛先をかわしながら、「あの経験から学んで、リスクに備えなければならない」として、いつ起こるとも限らない世界経済のリスクに備える必要性を前面に出しました。 さらに、現時点でリーマンショック級の事態は発生していない、熊本地震を大震災級だとするつもりはない、と公約を違えたことを認めつつ、「これまでの約束とは異なる新しい判断」という表現を使って、「公約違反」の批判を和らげることにも努めています。 そして、この判断を国民に仰ぎ、アベノミクスを加速するのか、後戻りするのかが、参議院選挙の最大の争点だ、と強調し、「選挙の争点は経済政策」という点にスポットライトが当たるような論理が組み立てられていました。
民主党政権が行き詰まり、安倍政権がスタートしてから3年半、金融政策と財政政策と成長戦略をフル回転させて目指してきたのが、「デフレからの脱却」です。 デフレは、一般的には「物価が持続的に下がっている状態」と言われ、そこから脱却するとは、 物価を上げること、具体的には2%程度上げて、それに伴って所得や消費も上がっていくことが 目標とされていますが、この1年余り物価は0%前後を行ったり来たりしています。有効求人倍率が初めて全国で1倍を上回り、倒産件数もバブル期の水準まで低下したりしても、経済全体では 微妙な状況が続いているわけです。安倍総理大臣は、このような状況だからもっとアベノミクスを加速しなければならないと言うわけですが、どうかなと感じている人も多いと思います。 では、別の選択肢があるのかとなると、最大限の金融政策でデフレを回避するという基本的な考え方は合理的とみられていて、景気刺激策の規模や方法に違いはあっても、野党が明確な対案を 示すことは難しいと思います。しかも、全政党が「いまは増税しない」ということでは一致し、 国民の痛みは先延ばしになるのですから、経済政策に焦点が絞られるほど、残念ながら選挙への関心は高まらないとみられます。
それでは、経済政策以外に問われることは何か。 1つは、超少子高齢化時代の社会保障政策です。10%引き上げの再延期で、民主党政権時代に 決まった「税と社会保障の一体改革」は、事実上棚上げされることになりました。
一体改革かすむ道筋 社会保障充実、安定財源が急務 首相、増税延期表明へ
そうであれば、超少子高齢化、そして経済成長がわずかしか見込めない時代に、社会保障をどう組み立て直せばいいか、改めて大きな青写真を示してもらいたいと思います。団塊の世代全員が75歳以上となる2025年には急速に需要が高まると予想される、医療と介護にどう対応するのか。現役世代の負担感がますます高まる中で、世代間のアンバランスをどう見直していくのか。財源は、あくまで消費税なのか、資産課税や相続税も選択肢になるのか。課題は山積しています。
もう1つは、安倍総理大臣が最終的に実現を目指す憲法改正の是非です。参議院で、自民・公明両党と憲法改正に前向きな、おおさか維新と日本のこころを大切にする党が3分の2以上を占めれば、数字上、改正の環境が整います。そのためのラインは、4党で現在を16上回る78議席とされています。
選挙情勢の詳しい分析を抜きに、内閣支持率や政党支持率だけで考えれば、必ずしも実現可能性のない数字ではないように見えます。
「政治とは、よりマシな選択をすることだ」と言われます。 選挙権年齢が初めて18歳以上に引き下げられる今回の参議院選挙。日々の暮らし、将来の社会保障、そして国民の権利を定めた日本国憲法まで視野に入れて、大勢の有権者が投票する選挙になるでしょうか。
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