地政学が、日本で再評価されています。佐藤優さんをはじめ著名な論者が、国際政治や安全保障を読み解くツールとして地政学の活用を勧める本を出版し、書店に平積みされています。なぜ今、 地政学に光が当てられるのか。グローバル化が行き着くところまで進み、未来が見通せない時代 だからこそ、根本的なところに立ち返って問い直してみよう、そんな思いがあるように見えます。
地政学とは、読んで字の如く、地理から政治を考える学問です。地理=国や都市の場所や地形は、 何百年の時間を経ても変わりにくい、したがって最も普遍的なことは地理的要因から抽出できる という考え方に立っています。しかし、地政学は、近年、世界的に評判が良くありませんでした。 1つは、ナチス・ドイツが極端な地政学理論に立って対外侵略を推し進めたため、第2次大戦後 しばらく「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」で完全に否定された歴史があること。もう1つは、冷戦 終結後あらゆる分野でグローバル化・インターネット化が進み、地理の障壁は克服されたという 認識が広がったこと。過去と現代に挟み撃ちされる形で、地政学の劣勢が続いていたわけです。
ところが、超大国アメリカの覇権に陰りが見えるのと逆行するように、地政学は息を吹き返して きました。中国の台頭・ロシアの復活・イギリスのEU離脱、世界が多極化する様相を呈すると、 地球規模で眺めたときの自国の場所や他国との位置関係が国際政治や安全保障を揺るがす要因で あることが再認識されています。同時に、フランスの人口学者、エマニュエル・トッドが指摘する、 「グローバリゼーション・ファティーグ(疲労)」という状況が先進国で現れ始め、歴史と共に 地理的要因から改めて国家や地域の未来を捉えようという動きが広がっています。
こうした世界的な趨勢は、日本の東京と地方の関係にも当てはまります。人口減少時代の日本は、 東京一極集中が続くことの限界を感じ取り、「多極社会」に変わる模索を始めています。そこで 不可欠なのは、それぞれの地方都市が自立して生きていく力を磨くことです。それには、時代が 変わっても変わることのない地理的要因を「日本版地政学」で問い直すことが出発点になります。
僕の暮らす松本は、地政学的に見た場合、どうなるでしょうか。
◆日本列島の真ん中に位置し、 ◆首都東京からの距離は230km、◆標高600mあまりの盆地で、◆西に北アルプス、東に 美ヶ原という日本有数の山々に囲まれ、◆四方から一級河川の清流が市街地に流れ込んでいる。 東京からそれほど遠くない距離で「美しい山と水がある街」と言えば、それまでですが、これをもっと突き詰めていくことが何より必要ではないかと思います。
高速交通網では遅れを取っているものの、東京から200km余りという絶妙な距離をどのような 方向に生かすか。日本列島が亜熱帯化しつつある時代に、標高の高さが生み出すクールな気候を どう活用するか。財政に限りがある中で、どこに重点を置いてオリジナルな山岳観光を進めるか。市内を縦横に走る一級河川のスペースを、もっと有効に利用できないか。そして、日本の真ん中に 位置することを大きなメリットにできないか。地政学的ポテンシャルを根本から問い直すことが、 人口減少時代に入る松本で、新たな産業の芽を生み、日常の暮らしを向上させることにつながると考えます。
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