山本太郎と田中角栄

参議院選挙が終わって10日余り、地方都市・松本でもこういう人たちにまで共感が広がっているのかと驚くことがあります。れいわ新選組・山本太郎氏に対する評価です。先日は自民党の選挙に長く関わってきた80代の長老が、「彼の政見放送を観て、感動したよ」と語りかけてきました。ロスジェネの代表として登場した山本氏が、地方で暮らす高齢の保守層も惹きつけ始めていると感じます。

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れいわ新選組が掲げる経済政策は、いわゆる55年体制下の自民党・保守本流、田中角栄元首相の系譜を引く旧経世会が主導していた政策と、大きな意味では重なっています。①消費税の廃止②公的住宅の拡充③最低賃金の引き上げ④公務員の増員⑤一次産業の戸別所得補償⑥国債増発による公共投資。これらは、1970年代の田中内閣の政策基調に近いものです。

当時の日本は、高度経済成長期を経て、ホワイトカラーとブルーカラーで、都会と田舎で、所得や経済の格差が広がり、「国土の均衡ある発展」が目標とされた時代でした。その後、昭和が終わると共に、冷戦が終結し、バブル経済が崩壊すると、グローバル化への対応や財政状況の悪化から、東京集中と財政緊縮の「小さな政府」が志向される時代へ移っていきます。

6年前に山本太郎氏が参議院選挙で初当選したときは、脱原発を前面に掲げ、今回のような経済政策は影を潜めていました。この間、かつて田中角栄元首相の秘蔵っ子と言われた小沢一郎氏と合流し、「生活の党と山本太郎となかまたち」という名称の政党で活動を共にしました。小沢氏とは、れいわ新選組の結成にあたって袂を分かちましたが、強く影響を受けた形跡が窺えます。

経済政策とは別の側面で、山本太郎氏と田中角栄元首相に共通点を見出している専門家もいます。東京工業大学の中島岳志教授は、参議院選挙の期間中に次のように指摘していました。「枝野さんが掴めなかった若年層と保守層を、山本太郎さんが掴んでいると思います。田中角栄らしき人がようやく現れたと思っているんです。彼は高校中退で、エリートではない。祭りの御輿を担いでいるような、地方の共同体を支える人たちと、ものすごく体質が合うと思うんです」(東洋経済ONLINE 7月12日掲載)。

冒頭で紹介した長老が示した共感の背景を、かなり言い当てているように思います。山本太郎氏は、重度の障害を持つ人たちを候補者に擁立し、政治は生きずらさを感じている人たちのものであると、当事者意識を広く呼び起こそうとしました。そのことは、人口も資金も情報も東京に集中する状況にもどかしい感情を抱いている地方の住民の目には、田中角栄元首相とダブって映るのではないでしょうか。

松本で政治活動を始めて3年半。自分の問題意識を大勢の人たちに広げて、市政の当事者である気持ちを持ってもらうことは、簡単なことではないと感じています。それでも、NHKの記者では見えなかった風景を目にし、政治家を目指さなければ持てない視点を手に入れ、自分が目指す方向性に手応えを感じています。山本太郎氏の存在も1つの糧として、末永く豊かに自由に暮らせる街を創るために、市民の共感を広げていきたいと思います。

積み重ねた時間と対話

ジセダイトーク

松本で新しいことにチャレンジするキーパーソンをゲストに迎え
松本のいまと未来を語ります。
臥雲が大切にする、世代を越えた多事争論。