松本市の6月定例市議会が閉会しました。「オール与党」と言われている市議会の雰囲気を肌で 感じてきました。本会議や委員会の質疑は、一言で表現すれば、「静寂さ」に覆われていました。
角が立つ質問はほとんどなく、紋切り型の答弁に食らいつく議員も少なく、一触触発の緊張感が 漂う場面を目にすることはありませんでした。傍聴に来ていた市民は数えるほどでしたが、いま の議会の状況ならば、あえて足を運ぶ必要はないと感じます。地方議会はどこもそんなものだと 言ってしまえば、そうかもしれませんが、”理屈っぽくて議論好き”と評されてきた松本人の気質を 考えると、こんなはずじゃなかったという気がしてなりません。
4期目の菅谷市政は、総事業費100億円規模の3つの「ハコモノ」プロジェクトを抱えています。 松本城の史跡から移転する「博物館」、老朽化による建て替え計画が進む「波田病院」、そして 耐用年数が迫り否応なく建設計画が俎上にのる「市役所新庁舎」です。中でも、市役所新庁舎建設は、 松本の未来の街づくりの根幹に関わるビッグプロジェクトで、松本城周辺に残すよう求める意見と、 郊外への移転を検討すべきだという意見に、大きく二分されることが予想されます。菅谷市長は、 所信表明で「今の任期中に方向づけを確実にしたい」と述べていますが、早い段階で幅広い立場 や地域の市民の声を吸い上げる仕組みを作り、喧々諤々の議論を展開してもらいたいと思います。
一方、市議会で移転場所が公表された「博物館」については、近々、地元説明会が開かれる予定 です。地元の人たちからは「結論を出した後の話し合いでは意味がない」という声も上がってい ますが、市長自らが出席し、具体的にどのような博物館を作り、未来の街づくりにどう活かして いくのか、率直に語ってもらうことが期待されています。
菅谷市長は、これまで4年の任期ごとに市内35の地区でそれぞれ1回、市民との意見交換会を 開催してきました。4期目の初年度も、8月から同じような頻度で開催される見通しです。回数が 多ければいいというものではありませんし、実のある議論をするためには事前にテーマや質問を ある程度整理することも必要だと思います。その上で、職員では答えられない質問に真正面から 向き合い、参加した市民が行って良かったと思える場になることが望まれます。超少子高齢化の 課題とともに「ハコモノ」プロジェクトに取り組む松本市にとっては、こうした機会を通じて、 市長と市民が適切な距離感を作っていくことが、これまで以上に重要になります。
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