猛暑が少なかった8月が終わろうとする日の早朝、北朝鮮の中距離弾道ミサイルが北海道の上空を通過し、Jアラートによる警報が東日本の広い範囲で鳴り響きました。松本市に住んでいる僕も、何事かと思ってスマホを手に取り、テレビを観た一人ですが、安倍政権の思惑やマスメディアの喧騒を横目に、大半の人たちが普段通りの生活を送り続けていたように見えます。ただ、残念なことに、毎朝8時から聞いている「Pon pon pon…」のフレーズは流れてきませんでした。
朝ドラ「ひよっこ」の主題歌『若い広場』は、ドラマの素晴らしさと相まって、「古き良き日本の情感のようなもの」を呼び起こしてくれます。それでいて瑞々しいセンスの良さがあり、還暦を過ぎた桑田佳祐が、世代を超えた国民的歌手になっていることを実感する歌です。「肩寄せ合い 声合わせて 希望に燃える 恋の歌」。桑田自身、「そんなつもりじゃなかったけど、なぜか身にしむ歌謡曲」と表現しています。そして、この曲を含むニューアルバム『がらくた』は、昭和の歌謡曲のエッセンスが散りばめられた、懐かしいけど新しさを感じる楽曲で溢れています。桑田佳祐という人の、気取らなさ、猥雑さ、切なさ、懐の深さが生み出す、日本のポップス=大衆音楽を存分に堪能できます。ぜひ幅広い世代に共感してもらいたいと思います。
桑田佳祐率いるサザンオールスターズが、「ラララー、ラララ、ラララー…」と巻き舌が混じったダミ声で突然テレビに現れたのは、僕が中学3年生の時でした。フォークソングからニューミュージックへ、若者の音楽シーンが微妙に変化していた当時、Tシャツに短パン姿の大学生が、ハチャメチャな歌詞を、テンポの速いリズムに乗せて、聞き取りにくい発音で歌う『勝手にシンドバッド』は、衝撃でした。ただ、世間の音楽的評価は決して高くなく、僕自身も何が凄いのかは全くわからないというのが正直なところでした。しかし、振り返れば、間違いなく革命的な曲でした。
あの曲の何が凄かったのか。たまたま本屋で見つけたスージー鈴木という音楽評論家の著作が、わかりやすく分析しています。今となっては至極当たり前な文化である、「日本人が日本語でロックを歌う」ことを確立させた。なるほど、そうか、と納得します。英語的に日本語を発音する、日本語に混じって英語をシャウトする、意味不明なフレーズを歌詞にする、何が起こっているのかすらわからないくらいテンポを速くする。こうした桑田スタイルが世に出てこなければ、ロックは英語で歌わなければいけない、日本の曲は正統な日本語で歌うべきだ、といった固定観念に、今も縛られていたかもしれません。それをぶっ壊して、グローバリズムと国粋主義の間に新たな道を切り拓いた先駆者でした。そんな意識は全くない、と本人は一笑に付すと思いますが。
来年サザンオールスターズ結成40年を迎える桑田佳祐は、混乱や停滞を経験しながら、今なお最前線に立ち続けています。本当に凄いと思います。その本質は何か。1つは、ラジカルでありながらポップであること。前衛であっても大衆の支持がなければ意味がない、そのイイ加減が本能的に染み付いている人だと思います。もう1つは、絶妙のバランス感覚があること。シリアス系の曲を左に、コミカル系の曲を右に、時代に合わせて振り子の原理で行ったり来たりしてきました。そして、それらを土台で支えているのは、「どんな文化にも貪欲で寛容」であろうとする進取の気性ではないでしょうか。
松本では、若い世代を中心に運営してきた松本城公園でクラフトビールを味わうイベントが、突然「品格にふさわしくない」という市役所側の判断で開催できなくなったことが物議を醸しました。文化に良いも悪いもない。桑田佳祐の、イイ加減とバランス感覚は、混沌として展望が見えない時代だからこそ、地方都市・松本にとっても、日本の政治にとっても、必要なことだと考えます。
※尊敬の念を込めて、敬称は略させていただきました。
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