貴乃花親方が戦っているもの

大相撲の暴行問題が発覚してから、ちょうど1か月。暴力を振るった横綱・日馬富士が、相撲界を引退し、傷害の疑いで書類送検されたことで、メディアの過熱報道も一段落した形ですが、今回の騒動で脚本・演出を担ったように見える貴乃花親方は、依然として沈黙を続けています。彼がなお戦おうとしているものは何なのか、この点を理解せずに幕引きすることはできないと感じます。

貴乃花親方が戦っているもの

貴乃花親方の父親、先代・貴ノ花は、僕が小中学生の頃のヒーローでした。水泳のオリンピック候補選手から、歳の離れた兄・初代若乃花を追うように相撲界に入り、「角界のプリンス」と呼ばれました。幕内最軽量の細身の体で正々堂々と真っ向からぶつかり、小兵に似合わぬ吊り技や驚異的な粘り腰で勝利をもぎ取る相撲に魅了され、いつもは暗くなるまで遊んでいても、大相撲の期間中は貴ノ花の一番が始まる前に家へ帰り、ブラウン管に釘付けとなっていました。22歳で大関に昇進して以降は、軽量のハンデに苦しみ、横綱にはなれないまま30歳で引退しましたが、大相撲を幅広いファンから愛されるスポーツとして定着させた、パイオニア的な力士でした。

次男の貴乃花は、優勝22回を数える大横綱となり、力士としての実績で父を大きく超えました。半月板を損傷する大けがを押して出場した優勝決定戦は、「痛みに耐えてよく頑張った」という小泉総理大臣の言葉と共に、相撲史に残る大一番として国民に記憶されています。ただ、この強行出場が仇となり、横綱・貴乃花は奇しくも父と同じ30歳で引退を余儀なくされました。その後、親方になると、一門の年功序列の仕来たりを破って相撲協会の理事に立候補。さらに去年の理事長選挙では現職の八角理事長に対抗して敗れるなど、「相撲協会の異端児」と見られてきました。こうした生い立ちと経歴が、今回の問題に対する貴乃花親方の強硬な姿勢の根底にはあります。

貴乃花親方が戦っているもの

貴乃花親方にとって、大相撲は、日本の国技であり、同時に真剣勝負のスポーツである。これが譲れない一線なのだと思います。横綱・白鵬の土俵内外の傍若無人な言動と、白鵬を頂点としたモンゴル出身力士の馴れ合いは、それを揺るがせにしている、限界を超えていると映っているのだと思います。かつては本国から来て孤独だった力士たちの互助会的機能を果たしていたグループが、横綱3人を擁する一大派閥に成長し、本場所直前にメンバーを集めて宴会を催した挙句、後輩力士に礼儀がなってないと制裁を加える。こうした事態は、自分が理想とする真剣勝負の相撲を蔑ろにするばかりか、相撲界に新たなムラ社会を作り出すことにつながるものであり、これ以上見過ごせないと考えているのでしょう。

貴乃花親方が戦っているもの

貴乃花親方の頑なさに、そこまで目くじらを立てることか、事を荒立てないで相撲を楽しませてくれよ、という空気も広がっています。八角理事長はじめ相撲協会の主流派は、モンゴルグループを率いる白鵬の増長ぶりを快く思っていないにもかかわらず、そうした世間の見方を背景に事態の収拾を図ろうとしています。そうした「事なかれ主義」の姿勢が、貴乃花親方をさらに苛立たせ、孤立させる構図となっています。

どんな社会や組織でも、従来のやり方を真正面から批判して正論を述べることは、厭われます。まして、貴乃花親方が目指す理想は、国技として保守することと、スポーツとして革新することを、大相撲で両立させるという一見して難解なものです。貴乃花親方の戦いには、勝機が乏しいように見えます。ですが、正論を受け入れる度量のない組織には、やはり未来がないと思います。


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