100年ライフで社会を大転換する

アメリカの大統領にドナルド・トランプが就任し、韓国では朴槿恵大統領が辞任に追い込まれるかもしれない状況になっています。いずれも超グローバル化によって仕事や収入を失った庶民の不満と反発が背景にあります。そして、それ以上に日本を含めた先進国の社会に大きなインパクトをもたらそうとしているものが、人間が100年以上生きる、長寿化の到来です。長寿を厄災とみなすのではなく、長寿の恩恵に最大限浴するためにはどうすればいいのか。この問いを体系的に論じて話題となっている本があります。『The 100-Year Life』(日本題『ライフシフト』)です。

100年ライフで社会を大転換する

人口学者たちの推計では、2007年に生まれた子どもたちの平均寿命は、G7各国で100歳を超え、日本では107歳まで伸びると見込まれています。100歳以上生きることが当たり前の時代=「100年ライフ」が近づいているというわけです。これまで僕らは、教育⇨仕事⇨引退の3つのステージに分けて人生を考えてきましたが、引退年齢が変わらなければ、ほとんどの人は30年以上引退生活を送るための資金を十分に確保できないという問題が生じます。そこで、著者のリンダ・グラットンは、3ステージの縛りから自由になり、仕事を中断したり転身を重ねたりしながら、80代まで複数のキャリアを経験する、「マルチステージの人生」を実践すればいい、それ以外に長寿化を恩恵にする方法はないと提言します。

100年ライフで社会を大転換する

(写真引用:リンダ・グラットン president.jp)

「長寿化がもたらす恩恵は、煎じ詰めれば、時間という贈り物だ」。著者は、このように述べて、平均寿命の上昇が「高齢化」と表現され、老いて生きる期間が長くなるという側面に注目が集まることに疑問を呈します。そして、実際には思春期をはじめ若々しく生きる期間が長くなる可能性が高いとして、多くのステージの移行に対応するため、金銭的な資産と合わせ、スキル・知識・評判・健康・友人・ネットワークといった「無形の資産」を常に充実させる必要があると主張しています。

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さらに、4年前に出版された前著『ワークシフト』でも示した働き方の転換について、長寿化に伴って子育て後の人生が長くなれば、夫婦が多くのステージの移行に対応するためにサポートし合うことが必要になり、夫婦2人とも仕事を持つ家庭が増えると予測しています。その結果、ジェンダーの不平等が縮小し、結婚生活や人間関係も変化する可能性があるとしています。一方、教育から仕事への移行、仕事から充電への移行の回数が増えて、どのステージをどの順番で経験するかという選択肢が広がると、年齢とステージがあまり一致しなくなり、選択肢に投資して選択肢を持っていることが、人生計画の欠かせない一部になると指摘しています。

100年ライフで社会を大転換する

「人生の設計と時間の使い方を根本から見直すことで、長寿を厄災ではなく恩恵にできる」。僕の中で、モヤモヤしていたものが晴れ、考えていたことが像を結び始めたような気がしています。人間がずっと目標にしてきた長寿こそが、幸福に生きることを難しくしているというジレンマに、僕らは直面しています。「100年ライフ」を前提にすれば、個人の意識も、企業の制度も、教育機関のあり方も、政府の政策も、大転換を余儀なくされます。しかし、ともすれば何を目標に進んでいけばいいかわからなかった状況を脱し、前向きに取り組むべきことが明確になった希望を感じます。僕の住む松本市は、「健康寿命延伸都市」の実現を目指してきました。長い老後を健やかに過ごすという目標から、100年の人生を幸福にするという目標へ。社会の変化のスピー ドに遅れを取らないように、全世代のための改革に直ちに取り組む必要がある。そう考えます。


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