現実感がない。トランプ大統領が就任直後から次々と実行しようとしていることを、多くの人たちは、そう感じているのではないでしょうか。僕もその1人です。選挙用のオーバーな表現だろう、共和党の穏健派がブレーキをかけるだろう、そういった希望的観測をあざ笑うかのような言動を連日続けています。その中には事実とかけ離れた突拍子もないことが多く含まれているために、本当の意味で危機感を持つまでには至らず、どこまで現実として受け止めていいかわからないのだと思います。
日本の自動車貿易への批判などは、その典型です。日本メーカーが現地生産を進め、アメリカ車の輸入関税がゼロとなっている現状を考えれば、どこまで本気で取り込もうとしているのか半信半疑にならざるを得ません。しかし、オバマケアの見直し、TPP協定からの永久離脱、イスラム教国からの入国停止、そしてメキシコ国境沿いの「壁」建設まで、矢継ぎ早に大統領令に署名するトランプ大統領の行動は、「アメリカ第1主義」の本気度とその権力の大きさを僕らに突きつけつつあります。通商・経済の分野で打ち出される「アメリカ第1主義」が、いずれ防衛・安全保障の分野でも具体的な形になって現れてくると覚悟しておく必要があると思います。
トランプ政権の現実感のなさを助長しているのが、報道に対する感覚の異常さです。事実を広く知らせること(=報道)が公正な社会を形づくるには欠かせないという認識が希薄な人たちが、政権の中枢を占めています。現場写真でオバマ前大統領のときに比べると明らかに少ない就任式の参加者について、大統領報道官が「観衆としては文句なく過去最大だった」と語り、「報道官はなぜ虚偽であることを口にしたのか」と問われた大統領顧問が、「報道官が示したのは『代替的な事実』(alternative fact)だ」と発言する。選挙戦でマスメディアと対立したことを割り引いても、報道を軽視し、事実を軽視する姿勢は、トランプ政権の最大の問題点です。こうした振る舞いを世界最強国の最高権力者が臆面もなく続ければ、世界全体に大きなダメージを与えることになると危惧します。
ただ、日本人にとって、トランプ大統領の出現は、織田信長の言葉を借りれば、「是非も無し」です。いいも悪いもない、仕方のない現実です。これに向き合っていく以外の選択肢はありません。その点で、朝日新聞に先週掲載された小泉進次郎衆議院議員の言葉は、響いてきました。「僕はトランプ氏勝利のニュースを見て、ちょっと語弊があるけれど、少しわくわくしたんです。日本人の底力が試される時代が来たぞ、ってね」。アメリカのTPP離脱が決定した以上、日本が主導して新たな多国間経済連携の枠組みを作り直さなければなりません。安全保障面の「アメリカ第1主義」が進めば、アメリカに大きく依存してきた安全保障政策の見直しと向き合わなければなりません。これらは、右も左も避けて通れない日本の政治課題となります。
もう1つ小泉議員が語った言葉で、唸らされたものがあります。「僕は政治を職業だと思っていない。生き方だと思っています。自分の意志でこの道を選んで本当に良かった」。政治は生き方である。強いメッセージです。「是非も無い」現実を受け止め、その現実を未来に向かって少しでも良い方向に動かしていく。人口が減少する時代であっても、固有の資源を有効に使って豊かに暮らせる地方都市を作っていく。地に足をつけて反芻していきます。
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