カジノモデルに頼らず、観光を総合産業に

カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の整備を推進する法案が、先週末、衆議院の委員会で可決されました。審議時間はわずか6時間、大阪万博の誘致と絡んだ関西政財界の思惑やトランプ次期大統領の影が見え隠れする中で、本来の目的が何なのか、経済効果やリスクがどうなのか、よくわからないというのが、大方の国民の受け止めではないかと思います。

カジノモデルに頼らず、観光を総合産業に
(写真引用:マリーナベイ・サンズ yoursingapore.com)

IR=統合型リゾートとは、どのような施設なのか。その代表的なものの1つが、2010年に開業したシンガポールの「マリーナベイ・サンズ」です。世界最大級のカジノを中心に、高級ホテル・コンベンションセンター・ショッピングモール・レストラン・美術館などが併設され、観光名所となっています。こうしたIRでは、面積で5%に満たないカジノが収益の80%近くを稼ぐとされています。巨大な施設全体で顧客を集め、カジノで集中的に収益を上げるのが、IRの収益メカニズムというわけです。

カジノモデルに頼らず、観光を総合産業に
(写真引用:macau.navi.com)

IRを整備する目的について、法案は、「観光および地域経済の振興に寄与すると共に、財政の改善に資する」としています。この目的が達せられるためには、まず、収益のエンジンとなるカジノの利用客が海外から大勢訪れる必要があります。果たしてそのような見通しが立つ状況なのかどうか。アジアでは、韓国が平昌オリンピックに向けて複数の施設を建設しているなど、カジノの市場はすでに飽和状態にあるという指摘もあります。一方、カジノの利用客が主に日本人だとすると、ギャンブルによる収益の増大は他の消費支出の減少を招いて、その地域独自の観光や経済振興の芽を摘んでしまう恐れがあります。

カジノモデルに頼らず、観光を総合産業に
(写真引用:衆議院内閣委員会 jiji.com)

国会の審議や一連の報道では、カジノの規制のあり方やギャンブル依存症の対策に焦点が当たっています。これらはIRを整備することを前提にしたときの論点で、それ以前に、そもそも経済政策や地域振興の観点から長い目で見てどれほどプラスがあるのか、冷静な議論をすることが必要ではないでしょうか。さらに、審議時間や採決方法に問題があることは間違いありませんが、中身の議論を棚上げしたのでは、いまの国民の多くには響かないと思います。

カジノモデルに頼らず、観光を総合産業に
(写真:美ヶ原からの眺望)

日本を訪れる外国人旅行者は、今年すでに2000万人を超え、観光・リゾート業は、人口減少時代の外貨獲得の手段として、ますます重要性を増していきます。僕が住む松本市でも、観光は地域経済の柱であり、これからは立ち寄り型から滞在型にシフトして1人あたりの観光消費額を引き上げていくことが求められています。そのためには、外国の富裕層にリピーターになってもらえるような新たな取り組みが必要です。ただ、そのための手段をカジノに頼ることに共感する人は、どれだけいるでしょうか。松本であれば、世界基準の山岳自然景観、健康長寿につながる水や食、文化教養を大切にする気風ーこうした地元の良い資源や素材をアイデアと手間をかけてもっと良いものにする。できるだけ地域の中でカネを回して地域全体を豊かにする。そして観光を総合産業にする。そのための活動を積み重ねたいと思います。


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