自宅のマンションから歩いてすぐの場所に、日没の少し前に足を運びたくなるスポットができました。地元新聞社が松本の都心にオープンした複合型施設「信毎メディアガーデン」の3階にある、オープンテラスです。
小学校から帰って近くの広場へ遊びに行き、日が沈む間際になると、母親が「夕飯できたよ〜」と呼びに来た、僕にとっての原風景が蘇ります。
この場所は、伊勢町通りと本町通りという長らく松本を代表してきた商店街が交差する地点に位置します。
伊勢町通りは、昭和60年から始まった土地区画整理事業で、「水と緑、ゆとりとうるおいのある街」を目指し、車道が拡幅され、広い歩道が整備され、電線が地中化されました。松本市のホームページには、「18年の歳月と官民合わせて900億円を超える巨費を投じ、新世紀にふさわしい商都・松本の顔が誕生しました」と記述されています。
しかし、現実は、幅を広げた車道で商店街が分断された形になり、せせらぎや街路樹を整備した歩道も人通りを増やすことに大きな効果を上げているとは言い難い状況でした。
そのため、新聞社を中心にショップやレストランが入った新しい建物ができても、松本の市街地を変えるだけのインパクトがあるとは思っていませんでした。1か月ほど前から、木材をふんだんにあしらった外観を目にする機会が増え、テナントの詳細が明らかになっても、印象は変わりませんでした。
それでも一度は早く見に行こうと思い、オープンした日の夕方、足を運びました。1階のスペースと2階のテナントをぐるっと回ったあと、3階へ上がると、「松本ブルワリー」のカウンターの先に設けられたオープンテラスが目に入りました。ビールを飲まなくてもいいのかなと思いながらドアを開けて足を踏み入れると、手すり越しに広がる光景に釘付けとなりました。
僕と同じように、手すりにもたれかかってオープンテラスからの光景を愉しんでいる人たちが大勢いました。若い女性が「ここから見ると都会っぽいね」と一緒に来た男性に話しかけていました。本当にそうでした。
建物に向かってまっすぐ伸びている伊勢町通りが、きらびやかに見えました。広いことがマイナスに作用していた車道も歩道も、ここから見ると魅力的に映りました。メディアガーデンに向かって歩いてくる人が楽しそうに見えたのも、気のせいではないように思います。
別の女性は、「山って、こんなに近いんだね」と呟いていました。夕映えの北アルプスの稜線は、伊勢町通りの行き当たりに浮かび上がっているように見えました。松本の街が美しい山並みに囲まれていること、街と山がちょうどいい距離感にあること、松本こそ都会と田舎のバランスの取れた暮らしができる街であることを、日常的に実感させてくれる光景です。電線の地中化を戦略的に進めれば、こうした「借景」を至るところで堪能できる街になるだろうと思います。
メディアガーデンのオープンは、都心回帰の意義と風景の価値を再認識する契機になるはずです。松本で最高の景色を眺めることができる「松本城東隣の市役所用地」について、どのように活用することが最も適切なのかを改めて議論することにも、いずれ繋がっていくと思います。平成最後の年にできたオープンテラスからの光景には、2020年以降の松本の街づくりのヒントが詰まっています。
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