大勢の日本人が祖先の霊と共に実家へ帰る「お盆休み」。松本では、帰省した人たちに混じり、ヨーロッパから訪れた旅行者の姿が目立ちます。そうした光景を街中で目にして帰宅した、72回目の終戦の日の夜、偶然チャンネルを合わせたドキュメンタリー番組に釘付けとなりました。
NHKスペシャル『戦慄の記録 インパール』。太平洋戦争の敗色が濃厚となっていた1944年3月に、日本陸軍がビルマからインドへ侵攻して戦局の打開を図ろうと敢行した「インパール作戦」について、日英両国で発掘した膨大な資料と存命している元兵士たちの証言を丹念に取材し、無謀な作戦の全貌と現代に通じる教訓を克明に描いた力作です。番組の柱となっているのは、作戦を主導した第15方面軍司令官・牟田口廉也中将の間近にいた、司令官付・齋藤博圀少尉が緻密に書き記していた日誌の記録です。司令官を大臣とすれば、司令官付は大臣秘書官にあたり、当時23歳だった齋藤少尉は、最高幹部同士の会話や作戦の決定過程を直接見聞きする立場にありました。兵站を度外視する作戦に反対を具申した参謀長に、「卑怯者、大和魂はあるのか」と怒鳴りつける牟田口司令官。上層部から「どのくらいの損害が出るか」と問われ、「5000人殺せば取れると思います」と答える牟田口司令官。「私は最初、敵のことかと思ったが、日本兵の意味だった」と綴られています。精神論や人情論が幅を利かせ、上層部の曖昧な意思決定の下で始まった作戦の結末は、戦死者3万人、傷病者4万人。しかも戦死者の半数以上は、作戦中止後の撤退路で飢えや病いのために亡くなっていました。齋藤少尉自身も、マラリアを患いながら死線を彷徨っていました。「道端の死体が俺の行く末を暗示する」「確かに将校や下士官は死んでいない」。戦慄の記録を書き残した齋藤少尉は、番組の最後に存命であることが明かされます。戦争について語ることはなかったという96歳の齋藤さんが、「日本の軍隊の上層部は・・・、悔しいけれど、兵隊に対する考えはそんなもんです」と言って堪えきれずに慟哭する表情から、目を逸らすことができませんでした。戦争、政治、組織、リーダー、国民性。現代に通じる様々な教訓を僕らに問いかける73分間でした。
※8月26日(土)午前0時50分から再放送。
全国的な天候不順を横目に、8月の甲子園は、連日超満員の盛況となっています。子どもたちの野球離れ、野球人口の減少が進んでいる中で、なぜ夏の高校野球がこれほど盛況なのか。僕は、人口減少時代を迎えた日本人の間に、都会から田舎へ、という意識のベクトルが強まってきていることが底流にあるのではないかと思います。その象徴が、かつては批判的な意見が大半だった、首都圏や大阪から地方の私立高校へ進む「野球留学」に向ける眼差しです。自分の能力を最大限活かせる場所を求めて親元を離れる高校生。そうした選手たちが地方の野球のレベルを引き上げ、地域内の競争を活性化させ、全国的に見れば戦力均衡が図られていく。もちろん地元の伝統校が活躍することに今も大きな期待が集まるわけですが、それぞれが切磋琢磨して全国で通用する力を付けていく。地域の格差や経済の格差が目の前にある時代に育った若い世代ほど、こうした道筋を違和感なく受け止めていると思います。そして、チャンスを求めて挑戦する若者も、新たなライフスタイルを模索する大人たちも、地域の活性化を望む年配の人たちも、都会から田舎へ、のベクトルで共感できる最大のイベントが、今まさに夏の甲子園なのではないかと考えます。
地元の松商学園は、終戦の日が雨で翌日に順延となった2回戦、岩手県の盛岡大付属高校に敗れました。盛岡大付は、ベンチ入り18人のうち岩手県出身が4人で、よく鍛えられていました。試合後、松商学園・足立修監督の次男に関する記事を見つけました。僕と同じ歳の足立監督は、早稲田大学→プリンスホテルで主力選手として活躍し、東京でホテルの支配人を務めていた6年前、母校から強く請われて監督に就任。それから3年後に、次男の星君は、父の背中を追って埼玉県から松本の祖父母の家に移り住み、松商学園に入学しました。尊敬する父の指導を受けて臨んだ最後の夏、ベンチ入りメンバーから外れ、甲子園のスタンドからの応援で、親子2人の高校野球は幕を閉じました。素晴らしい実績を持つ人材が松本で活躍し、そうした環境に憧れる若者たちが松本に集まってくる。さまざまな分野で都会の人たちを引き寄せる松本を、インパールの教訓を心に留めて創っていきたいと思います。
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