総裁選で滲み出した〈中央対地方〉

善戦か、圧勝か、想定内か。

安倍総理大臣の勝ち方に対する評価は、政治家もマスメディアも、どの立ち位置から見るかで自動的に振り分けられます。誰もが納得する客観的な尺度は存在せず、すべてがポジショントークと言えばポジショントークです。

それを自覚した上で、松本という地方都市で長期に及ぶ市政にチャレンジしようというポジションに立つ者として、平成最後の自民党総裁選をどう受け止めたのか、書き記しておきたいと思います。

総裁選で滲み出した〈中央対地方〉

総裁選が告示された直後の今月9日、僕は、政治学者の御厨貴さんを松本に招いて、対談形式の講演会を開催しました。「平成が生み出した『一強体制』と『地方自立』」と題し、自分が政治記者として大半を過ごした平成の30年間を振り返り、これからの日本と松本を改めて展望することが狙いでした。

その時点で、安倍支持の国会議員は8割を超え、直前に起きた北海道大地震の影響で選挙期間が事実上短縮された上に、石破陣営が頼みの綱としていた小泉進次郎氏も態度表明を避けたことで、大差による安倍3選は既成事実となっていました。ただ一つ興味をつなぎ留めたのは、国会議員の大半が安倍一強へ靡いたことで、図らずも〈中央対地方〉の構図が滲み出していたことでした。

平成という時代は、グローバル化の到来と人口増加局面の終焉によって、「国土の均衡ある発展」という国家目標の転換を余儀なくされた時代、と総括できるのではないかと思います。

同時にそれは、田中角栄を元祖とする地方で叩き上げられた政治家が中核をなした「経世会」が主導権を失い、代わって安倍総理大臣の祖父・岸信介を源流とする「清和会」が主役の座を占めるという、政治権力の転換をもたらしました。その変わり目に登場したのが小泉政権であり、世代交代のタイミングとも重なって、以後、東京生まれ東京育ちの政治家や官僚が日本を仕切る「一強体制」が確立された、と僕なりに捉えています。

総裁選で滲み出した〈中央対地方〉

東京のホテルで講演会の打ち合わせをした際に、御厨さんからハッとさせられる言葉を投げかけられました。「2020年の東京オリンピックで、東京はますます栄えます。そこから先、どうしようもない東京一極集中が進むと思います」。

聞いた瞬間は違和感を覚えました。というのも、それまで自分の中には、東京への集中は2020年がピークだろうという意識があったからです。しかし、言われてみれば、いま進められているのは、競技施設の建設だけでなく、首都・東京を再興するための交通インフラや高層ビルの建設です。東京一極集中はオリンピックが終わってから一段と加速すると考えるのが、残念ながら現実かもしれないと問い直しています。

今回の自民党総裁選で、石破氏に投票した党員票、とりわけ地方=非東京=非大都市圏の党員票の中には、僕と同じような気づきが底流にあって、〈中央対地方〉の構図を投票行動に反映したものが少なくないのではないかと推測します。このままの「一強体制」が続けば、地方創生の掛け声とは裏腹に2020年以降さらに東京一極集中が進み、地方の衰退は止まらない。そうした漠然とした不安感が、〈安倍55%・石破45%〉という数字には込められているのだと思います。

総裁選で滲み出した〈中央対地方〉

地方の声を中央に突きつける機会になったという点で、石破氏が安倍一強を相手に立候補して大方の見方を上回る票数を獲得したことの意義は大きかったと思います。「経世会」の最後のドンとも言える青木幹雄氏が、孤立無援だった石破氏の支持に敢えて動いた真意も、この辺りにあったのかもしれません。

東京一極集中に対して、地方はどう巻き返し、それぞれの都市が自立して幸福感の高い街を築いていくのか。ポスト平成の大きな政治テーマに、松本から「答え」を出していく決意です。


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