読書の冬です。年明け以降、松本も一昔前に戻ったような厳しい寒さが続いて、読了する本の数がいつもより増えています。
高校卒業まで学校の図書館にも滅多に足を運ばず、読書と無縁だった僕が、人並みに本を読むようになったのは、松本を離れて東京・御茶ノ水の予備校に通い始めた頃でした。
南浦和の競馬場の近くにあった学生寮に住み、通勤ラッシュの中を1時間かけて予備校に行き、服装も言葉遣いも全く違った東京の浪人生に気圧されながら、午前中に講義を受ける毎日。午後から寮に帰っても受験勉強以外にやることがなく、劣等感に苛まれているときに手にしたのが、大江健三郎の小説です。
乱読しました。一文の極端な長さに辟易しながら、論理の乱れが一切ない文章とタブーのない強烈な表現に引き込まれました。
『個人的な体験』『われらの時代』『万延元年のフットボール』etc.
とりわけ、1960年に社会党の浅沼稲次郎委員長を刺殺した17歳の少年をモデルにした『セヴンティーン』は、得も言われぬ読後感に打たれたことを憶い出します。
あの頃、予備校から歩いて数分で行けた神保町の三省堂本店は、自分も大学や日本や世界や歴史といった大きなものに繋がっているんだと実感できる、貴重な居場所でした。1995年以降、インターネットの時代に入り、本に取って代わり得るデジタルの情報源を手にしている今も、質量ともに豊富な本が揃う書店は、極めて価値の高い生活インフラだと考えています。
人口24万の松本市には、駅前のバスターミナル近くに「丸善」があります。東京の大型書店に引けを取らない規模で、松本のプライドの1つです。駅前周辺の地盤沈下で人通りが減り、最近は孤軍奮闘の様相ですが、何とか踏ん張ってもらいたいと思います。その「丸善」で数か月前から目立つスペースに並べられ、気にはなりながら敬遠していた本がありました。
『不死身の特攻兵』。著者は劇作家の鴻上尚史さん。特攻隊員として9回出撃し、体当たりしろという命令に抗って9回とも生きて帰ってきた、佐々木友次さんという特攻兵の実話です。後回しにしていたのは、なぜ今なのかに切実さを感じられず、少しばかり書店の押しつけがましさを感じたからでした。
「佐々木友次さんという存在を歴史の闇に埋もれさせてはいけない。佐々木友次さんが何と戦い、何に苦しみ、何を拒否し、何を選んだか。そして、どうやって生き延びたか。生き延びて何を思ったか。1人でも多くの日本人に知ってほしい」。著者の言葉と同じ思いを抱きました。
「21歳の若者が、絶対的な権力を持つ年上の上官の命令に背いて生き延びることを選んだ。それがどんなに凄いことなのか」。佐々木さんの生き様は、未来や希望を見出せず同調圧力に晒されている日本人に、最も大切にすべきことを気づかせてくれるのではないかと思いました。
一気に読み終わり、本のチカラに改めて感じ入る1冊でした。2020年からは大学入試も学習指導要領も思考力や判断力や表現力を重視する方向に大きく変わりますが、「学都」を自称する松本市は、子どもから大人まで誰もが手軽に多様な分野の本を愉しめる環境をもっと整えていく必要があると思います。今週末のジセダイトークで、本を生かした街づくりについて議論できるのが、楽しみです。
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