「アメリカ政治史上 最大の番狂わせ」と報じられた、トランプ氏の勝利から10日足らず。安倍総理大臣が、ニューヨークを訪れ世界の首脳として初めてトランプ氏と会談しました。日本のマスメディアは、大統領就任前の異例の会談としながら、安倍総理大臣の「信頼関係を築いていくことができると確信した」という言葉を伝え、おおむね肯定的に報じています。そうした中で、「異例ではなく異常だ」と、全く異なる見方をする外交専門家がいます。
(写真引用:内閣広報室 kantei.go.jp)
「世界初というのは、こんな異常なことをする国はないというだけの話です。全権を持つ現職の大統領を大切にするというのが、外交の礼儀です。このあとペルーで開かれるAPEC首脳会議で、オバマに、ものすごく冷ややかな対応をされ、『ロシアと何をやろうとしているんだ』とたっぷり言われるでしょう。もし会いに行くのなら、オバマと会ったあとに行けばいい。それならオバマとは喧嘩にならない。順番が逆です。何も考えていない」。
このようにラジオ番組で批判を展開したのは、佐藤優氏(元外務省主任分析官)です。
(写真引用:東洋経済 toyokeizai.jp)
佐藤氏がまず紹介したのは、アメリカ大統領選挙の開票が進んでいた今月9日の午前中に、鈴木宗男元衆議院議員からかかってきたとする電話の内容です。
「大変だ。安倍総理が、怒り心頭に発している。前日に外務省の杉山事務次官が『我々の分析ではクリントンが逃げ切ります。大丈夫です』と報告していたんだが、『違うじゃないか。もう外務省の話は聞かないからいい』と。いま外務省はビビりあがっている」。
佐藤氏は、こうした状況があったために、その後、安倍総理大臣が「トランプ氏にすぐ会わせろ」と言い、「はい、すぐやります」ということになったと言います。
「たとえ総理にそう言われたとしても、『お言葉ですが、オバマを怒らせても何もいいことはありません。日ロ首脳会談も徹底的に妨害されます。まずいです』と説得するのが、外交のプロの仕事です。今回の外務省の対応は、脊椎反射のようなものです」。
(写真引用:内閣広報室 kantei.go.jp)
そして、安倍総理大臣が「大変温かい雰囲気の中で会談を行うことができた。ともに信頼関係を築いていくことができると確信の持てる会談だった」と述べたことについては、こう解説しています。
「温かい雰囲気と言って、友好的な雰囲気という言葉は使っていません。外交的には、友好的でなかったということです。確信というのも、何の根拠もない主観の世界です。これは、典型的な失敗したときのやり方です。1時間半も会談したら、相当なことを話しているはずです。『非公式の会談なので中身は差し控える』と言っていますが、公式の会談でなくても詳細を明らかにすることは、山ほどありますよ。本来は、TPPや日米安保体制がうまくいったというアピールの場にしたかったはずですが、それができなかったということです。やらないでいいことをやってしまって、傷口を広げています。先が読めないほど、グチャグチャになり始めている。日米も日ロも大変です」。
(写真引用:bbc.com)
会談を終えて記者のインタビューに答える安倍総理大臣の表情は、どう見たらいいでしょうか。佐藤氏の分析が核心をついているとすれば、いつもと違った表情が垣間見えたはずですが、僕には、そこまでの変化は読み取れませんでした。
最後に佐藤氏は、これから官邸や外務省が行うことについて、こう予測します。
「スピンコントロール=情報操作をすることで、うまく行っているように見せかけるでしょうね。そして、いまの官邸周辺の政治部記者の力量だと、外交で何が起きているかを十分取材し切れないと思うんですよ。だから、スピンコントロールで流されている情報を本物と思って、『うまく行ってる、うまく行ってる』という形で、実態と乖離したイメージが広がると思います。昔の大本営発表と同じことになります。すでに先の記者会見が、大本営発表ですよ」。
政治の舞台、外交の舞台で、何が事実なのかを見極めるのは、難しいことです。自ら多角的に情報を入手し、自分なりの視点を確立し、メディアリテラシーを鍛えていく。その重要性がかつてないほど高まっています。
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