2050年の市役所と松本城

老朽化した松本市役所の新庁舎建設計画が、行政主導で進められています。市当局は、松本城の旧三の丸、天守閣の東側に位置する一等地に、現在より延床面積を広げて建て替える方針を、ほかの選択肢を丹念に検討することなく決めた上で、公募した市民からの意見聴取を事後的に行うなどして、2025年の供用開始を目指したプロセスを加速させようとしています。

2050年の市役所と松本城

ことし2月の議会で菅谷市長から現地建て替えの方針が事実上示されて以降、一連のプロセスと決定に、違和感を拭えません。最も強く感じるのは、「未来志向」という言葉を使いながら、現状に囚われすぎて未来の社会情勢や技術革新を先取りしようという意欲に乏しいことです。

その1つが、人口減少に対する視点です。国立社会保障・人口問題研究所の推計によりますと、現在およそ24万の松本市の人口が、2050年には19万2008人、いまの5分の4に減るとされています。行政の業務量が人口の減少幅に自動的に比例するわけではありませんが、全体として縮小の方向で考えていくことは必然でしょう。加えて、2050年には高齢化率が36%を超え、多くの市民は住居に近いところで行政の手続きが済むことを望むようになると考えられます。つまり、本庁に置かねばならない部署や本庁で行うべき業務をできるだけ絞り込み、 6つの支所や14の出張所、各地区の地域づくりセンターに職員と業務を分散し、市役所の分権化とネットワーク化を進めることが求められます。こうした分権化とネットワーク化は、 ICTの技術革新で十分実現できると想定されます。そうであれば、本庁舎の規模や機能も現状を根本から見直すことになるはずです。

2050年の市役所と松本城

もう1つは、松本城の価値を最大限に高める視点です。「商都松本は城で持つ」の言葉通り、2000年以降、上高地や美ヶ原を訪れる観光客が減り続ける中で、松本城の観光客数は一貫して増加傾向にあり、去年は100万人に迫りました。松本市内に宿泊する外国人観光客も、ここ数年急増しています。松本市が、世界基準の観光都市を目指し、天守閣を中心に旧三の丸までを取り囲むエリアを歴史に鑑みて整備することは、市民にとっても松本城をより魅力あるものとし、近隣の街をはじめ市全体が潤うことになるはずです。実際、いま松本城の南西方面の外堀を復元する事業が多額の予算を使って進められています。そうであれば、市役所が建つ旧三の丸の一等地も、松本城の価値を最大限高める活用の仕方を優先して考えるべきではないでしょうか。たとえ現在地に市役所の新庁舎を建設するにしても、市役所の分権化とネットワーク化を前提に規模や機能を絞り込むことができれば、活用の可能性と選択肢が広がります。さらに、新庁舎と切り離して建設計画が進められている博物館も合わせ、旧三の丸エリア全体を俯瞰した構想を練り直すべきだと考えます。

2050年の市役所と松本城

今週日曜日に開かれた新庁舎建設に関する市民懇話会でも、これら2つの視点を踏まえた意見が複数の委員から出されました。しかし、これまでの進め方を見る限り、市当局は、現在地に延床面積を広げて建て替えるという既定方針を見直す考えはないと思われます。計画では、2020年末までに事業者を選定し、2021年から設計・建設工事に入る予定です。
人口減少を見据えた市役所の分権化とネットワーク化。世界基準の観光都市にふさわしい松本城エリアの総合的整備。双方の視点を織り込んで、2050年の都市構想の作成を進めたいと思います。


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