情報リークと、呻吟するマスメディア

何が事実で、何が事実ではないのか。日々見聞きするニュースの情報を自分たちで取捨選択しなければならない状況に、僕らはいつの間にか陥っています。情報の信憑性を揺るがすために別の情報がぶつけられ、問題の焦点がぼやけて混沌とする。そのうちに何が問題だったかもよくわからなくなる。そうしたことが、いまの日本では繰り返されています。

情報リークと、呻吟するマスメディア
(前川喜平前文部科学事務次官 写真引用:twitter.com)

安倍総理大臣の友人が理事長を務める加計学園の獣医学部新設問題で、「総理のご意向」などと記された文書について、5か月前まで文部科学省の事務方トップを務めていた前川喜平前事務次官が「担当課の職員から自分が説明を受けた際に示された」と証言したことで、文部科学省の担当者が内部レクチャー用の資料として作成したものであることを否定する材料は無くなりました。同時に、朝日新聞や民進党が入手して安倍総理大臣の関与を追及する論拠となった、この文書が、直接的にせよ間接的にせよ前川氏からリークされた情報である蓋然性が極めて高いことも裏書きされました。

報道記者にとって、特ダネとリークは表裏一体です。前川氏周辺の意図がどこにあるにせよ、この文書を報じた記事は、獣医学部新設問題を掘り下げて検証していく上で、大きな特ダネでした。だからこそ、政権サイドは、この文書の存在を今なお認めていません。そして、前川氏本人の証言が朝日新聞や週刊文春に掲載される3日前、前川氏の『出会い系バー通い』が読売新聞の1面で報道されました。関係者の発言や前後の経緯を考えれば、この情報は官邸周辺からリークされた蓋然性が高いと推定されます。その結果、問題の焦点が、文書の存在から証言者の人格や政府内の権力闘争へ微妙にズレていき、日々更新されるニュースの情報にかき消されつつあります。

情報リークと、呻吟するマスメディア
(杉田和博官房副長官 写真引用: gichokai.gr.jp)

前川氏のインタビューでとりわけ目を引いたのは、出会い系バー通いについて、「昨秋、首相官邸幹部に呼ばれ、『こういう所に出入りしているらしいじゃないか』と注意を受けた」という記述です。のちに前川氏は、この首相官邸幹部は、杉田和博官房副長官であることを明らかにしています。杉田副長官は、警察官僚として主に警備・公安畑を歩み、中曽根内閣で官房長官秘書官、橋本内閣で内閣情報調査室長、小泉内閣で内閣危機管理監を歴任し、いわば日本の情報機関の中枢を歩んできた人物です。一般には馴染みが薄いものの、第2次安倍内閣の発足と共に中央官僚のトップである事務の官房副長官に就任し、あらゆる情報をコントロールできる立場にあります。その杉田氏が、獣医学部新設をめぐって内閣府と文部科学省の綱引きが続いていた頃、すでに前川氏の出会い系バー通いの情報を把握し、本人にぶつけていたわけです。その後、今年1月に文部科学省が組織的に『天下り』を斡旋していた問題が発覚し、前川氏は事務次官の辞任を余儀なくされます。出会い系バー通いの情報リークによって、加計問題と天下り問題が一本の線でつながっているように見えてきたと考えるのは、勘繰り過ぎでしょうか。

情報リークと、呻吟するマスメディア

いま日本のマスメディアは、非常に難しい立場に置かれています。強力な政権によって、情報は次から次へと上書きされ、そのスピード感に追い付くのに精一杯。立ち止まって事実を検証する暇も十分になく、問題の全体像を伝えることに呻吟しています。社会の分断が、論調の二極化をエスカレートさせ、ネットメディアの浸透と相まって、マスメディアへの信頼を掘り崩しています。それでも、相対的に見れば、僕らが情報に優先順位をつけて出来事を判断する尺度となり得るのは、報道の経験と人材を蓄積してきたマスメディアであることに変わりはありません。総力を挙げて、情報の氾濫と統制に立ち向かっていくことを期待します。


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